
私は、山の中の田舎で育ちました。実家の裏山は、今はすっかり新興住宅地になってしまったのですが、子供の頃は、鬱蒼とした森でした。
50年くらい前、私は、カブトムシやクワガタが大好きで、夏休みの間は、ほとんど毎朝、裏山に入り虫採りをしていました。
小動物、特に野鳥に出会うことは珍しくありませんでした。小綬鶏(コジュケイ)、雉子(キジ)、山鳥(ヤマドリ)などには、ほとんど毎日出会っていました。ヘビにもよく遭いました。他の大型の虫にもよく遭いました。自分は、カブトムシやクワガタ以外の虫や鳥や動物には、詳しくなかったのですが、大きな蛾や蝶にも遭いました。
そんな森の中の何ヶ所か、めぼしをつけているカブトムシやクワガタがいそうな木々を2時間くらいで廻る、というのがルーティーンでした。
朝5時か5時半頃だったと思います。次の場所に移動する途中、ヤブのような、ほとんど獣道のような、草や背の低い木が鬱蒼とするところを通っていた時、遠くにアルミホイルよりちょっと鈍い、くすんだような銀色をした模型飛行機のような形のものが、私の背の高さよりもちょっと低いくらいの木の下枝に、風もないのにゆらゆら上下に揺れながら、くっついていました。
何だろうなあ、と思いながら、大体15メートルくらいまでのところまで近づいた時、私は、凍りついて足がすくんでしまいました。鈍いメタリックのその物体は、「メカトンボ」に見えたからです。大きさは、多分、30センチくらいあったのではないか、トンボだとしても、あんなにデカいものは見たことがありません。鬼ヤンマも見たことがありますが、それよりずっと大きかったし、色が全然違ったのです。
それからどのように家に帰ったか覚えていませんが、とにかく、ヤバいものを見た、という気持ちでしばらくショック状態でした。
その日を境に、山に独りでいくのは怖くなってやめました。
30センチもあるメタリックなトンボのようなもの、あれは一体何だったのか、いまだに不思議に思っています。
宇宙人の探査用のドローンだったのかも知れません。