
昔々、中国に、貧乏だがとてもまじめな男がいた。
朝と晩、毎日毎日香を焚いて祈っていた。
するとある日、祈っている途中、ふと見上げると空中に仙人が浮かんでいる。
驚きのあまり唖然としている男に仙人が話しかける。
「お前が毎日あまりに熱心に祈るので、天帝がわしに尋ねて来いとの仰せでな。
お前の望みは何じゃ?」
冷静さを取り戻した男は毅然としてこたえた。
「私の望みはごく僅かなものです。お金や名誉は要りません。
深山や水辺を逍遙する気ままなこの生活を続けて一生を終えたいのです。
ただそれだけです。」とその男は言った。
すると、仙人は笑いながら言った。
「お前のその望みはまさしく神仙界に住むわしらの望みに他ならない。
単なる人間であるお前ごときにかなえられるはずがなかろう。
もし金持ちになりたいとか出世したいとかいうのなら叶えてやれたのにのう...」
そう言うと仙人は消えた。
その男がそれからどうなったかは誰も知らない。