反戦平和の「ヘイ・ジュード」

ビートルズの名曲「ヘイ・ジュード」ですが、これは、元々は、ジョン・レノンの息子のジュリアン・レノンのことを歌ったものです。

ジョン・レノンが亡くなってから、32年後、ロンドン五輪の開会式でポール・マッカートニーが出てきて、ヘイジュード歌ってましたね。

ジョン・レノンが生きていたら、間違いなく「イマジン」が歌われていたでしょう。


1990年にジョン・レノンの生誕50周年時、国連の信託統治理事会でオノ・ヨーコが演説し、会場にイマジンが流され世界130か国に中継され、僕も観ました。

イマジンは、ご存知の通り、反戦平和の歌、というイメージが強いですよね。

ヘイジュードはレノン=マッカートニーなんですが、反戦平和の歌のイメージはあんまりないのではないでしょうか?

ところが、そうでもないんです。このビデオをご覧ください。


この人、チェコの歌手で、マルタ・クビショヴァーという人です。

チェコといえば、「プラハの春」というのを聞いたことがある人は多いと思います。

これは、1968年に、ドゥプチェクという人を中心に「顔の見える社会主義」を標榜して自由主義的な改革を始めたことに対し、当時のソ連のブレジネフが、制限主権論を主張しワルシャワ条約機構軍をチェコに侵攻させて改革をやめさせた事件のことです。

そこでマルタは体制と戦うために、この「ヘイジュード」の歌詞を、内容を変えてチェコ語で歌いました。正面切って当局を批判するわけにはいかないので、体制への批判や自由への希望を暗示する内容となっているそうです。

1969年に、マルタの「ヘイジュード」が発売されると60万枚の大ヒットとなりますが、当局に発禁処分を受け、1970年には、彼女は、チェコの音楽界を永久追放になってしまうのです。
その後、すさまじい艱難辛苦を彼女は経験するのですが、彼女の精神は、静かに民衆の中で生きていたのです。

1989年12月10日、プラハのヴァーツラフ広場で、30万人の大群衆の中、チェコの民主化革命である、「ビロード革命」の成功を祝う集会で、約20年ぶりにマルタが登場し、「ヘイジュード」を歌い、群衆の大喝采を浴びました。

チェコの人々にとって、この歌は、自由と民主主義の象徴的な歌になっていて今でも特別な思いを込めて歌われています。