言葉で現実を創り出す

お口直しに、たまには本の話を。

「言葉によって現実を創り出す」と言ってしまうと、作家さんは皆、同じことをやっているように思いますよね。

例えば、ジェイムス・ジョイスの「ユリシーズ」はダブリンの街を克明に描写しているため、ダブリンの街が滅んでしまっても、この小説さえあれば、ダブリンの街は復元できると言われているほどだそうです(ごめんなさい、この小説読んでないんで伝聞です)。

そういうリアルに描写された街で、虚構の物語が展開していく、そんな感じですね。

でも、今日ご紹介したいのは、そういう作家さんではないんです。

言葉によって存在しないシーンを描写し現実以上に現実的なシーンを作り出す、ということを試みた人がいます。

アラン・ロブ・グリエという人です。

つまり、ジェイムス・ジョイスは言葉で現実にある街を再現したのに対し、ロブ・グリエは、現実にはあり得ないシーンをさも現実に存在しているかのように表現して、現実以上に現実的な現実を創り出すことを目指したのです。

こういう行き方を「反レアリスム」というそうです。

例えていうならば、言葉で、エッシャーのだまし絵を創るみたいなことです。

私は、「消しゴム」、「スナップショット」、「覗く人」を読みました。

彼のやり方に慣れると、結構楽しめます。

アラン・レネの「去年マリエンバートで」の脚本も書いています。

この映画自体は、すごくつまらないです。でも、その映像自体、俳優の背景や舞台装置を見ると、彼のこだわりの一部が垣間見られます。一見ありそうな風景、でも決して現実ではないような風景です。彼は、最初、言葉でこれをやろうとしました。そういう変わり者がいても面白くていいですよね。