タイム・トラベラー(1)

先日、バック・トゥー・ザ・フューチャーの3部作をテレビでやってましたね。

それで、昔読んだ本を引っ張り出してきて、ざっと、また読んでみました。そこで、今回は、タイムトラベルについてまとめてみました。

マレット博士の理論

マレット博士という方がこの本を書いているわけですが、本の大半は、なぜ、タイムマシンを作ろうと思ったのか、亡くなったお父さんへの思い、タイムマシンの理論ができるまでの苦労話です。理論的なことも少し書いてありますが、それほど詳しくはないです。

結論的には、現状では、未来に行くことは可能であると言っています。過去に行くには、博士が考案した時空を歪ませる装置を稼働させれば、その装置が稼働し始めた時点までの過去には行ける、としています。

つまり、現時点では、博士は、過去を遡って、お父さんには会えない、という結論となっています。

やはり過去にはいけないのか?

では、過去には、やはり行けないのでしょうか?

ワームホール

この点、映画「インターステラー」の科学監修をした、カリフォルニア工科大学教授でノーベル賞受賞者のキップ・ソーン博士は、ワームホールを使って、過去に行く方法を提唱しています。

AllenMcC. の作品から引用しました。

ワームホールを作って、その中に入り、過去に通じる時空から出てくれば、過去に行ける、ということになります。映画「インターステラー」の中にも、こういうワームホールが出てきました。

しかし、ワームホールを作る時に、「エキゾチック物質」というものが必要になるそうです。この物質は、通常の物質とは反対のエネルギー(負のエネルギー)を持っており、通常の物質とは全く逆の動きをするそうです。そして、我々のタイムマシンをこのエキゾチック物質のバブルで覆えば、このワームホールの中を安全に通り抜けられる可能性があるそうです。

では、そんな物質があるのか?という話になりますね。この点、日経サイエンス によると、エキゾチック物質はけっこう見つかっているそうです。また、Wiredによると、科学者は、すでに、いくつかのエキゾチック物質の生成にも成功しているらしいです。

現状では、まだまだ実現はできないですが、ということで、ワームホールを使ったタイムトラベルは、将来的には可能性があると思います。

タキオン粒子

アインシュタインの相対性理論では、光よりも速く運動する物体はないことになっています。

しかし、仮説上の粒子で、「タキオン」というものが想定されています。「宇宙戦艦ヤマト」のワープの説明の中にこのタキオン粒子出てきましたよね。

この「タキオン」ですが、アインシュタインの重力場の方程式に矛盾しない形で表現できるようですので、もし実在して物体をくっつけることができれば、超高速で物体を移動させることができ、タイムマシンの開発にも寄与することが期待できます。

しかし、速度が無限になってしまうような不安定な性質をもっているようですので、仮に実在していても、実用化するのはかなり難しいと考えられているようです。

タイム・パラドックス

仮に、タイムマシンを作ることができたとして、過去に行った時、例えば、自分が生まれる前に、父親を殺してしまった場合、自分は生まれないことになり、そもそも、自分は過去に行くことができなくなってしまう、という、有名な「父親殺しのパラドックス」があります。

バック・トゥー・ザ・フューチャーでも、マーティーの両親が結婚出来なければ、自分が生まれてこないことになり、自分の存在が写真から消えそうになる、なんていう展開もありましたよね。

科学の原点である「因果律」に由来する、このタイムパラドックスですが、もし、過去と現在との間に矛盾が生じてしまった場合、どうなるのでしょうか。

故スティーブン・ホーキング博士は、そもそも、タイムパラドックスが起きないように宇宙が自ら調節するのではないか、と言っています。これを「時間順序保護仮説」というそうです。そして、仮にワームホールを作っても、不確定性原理により多量の放射線が発生し、それが時空を湾曲させ過去に行けなくなるか、あるいは、時空に特異点が発生して、ビッグバンやビッグクランチが起きてしまい、やはり過去には行けない、と言っています。

キップ・ソーン博士は、それでも、エキゾチック物質を使ったワームホールによるタイムトラベルの可能性を追い求めています。

エヴェレットの多世界解釈

ヒュー・エヴェレットという物理学者の考え方で、この世界は、我々の選択の連続によって無数の平行宇宙(パラレルワールド)に枝分かれしていくのである、という考え方です。

とすると、もし、タイムマシンで過去に行って自分の父親を殺して現在に戻ってきたとしたら、そういう世界が新たにできる、ということで、その世界の中でだけは、父親がいない世界になるだけであって、その他のパラレルワールドには、自分の父親がちゃんといるので矛盾はない、と考えるのです。

現在開発中の量子コンピューターも、この多世界解釈を前提にしていると、聞いたことがあります。全てのパラレルワールドの量子的な振る舞いを使って計算するそうですので、通常の2進法的なノイマン型コンピューターより何百倍も速く計算できるらしいですね。

ちなみに、人間の脳は量子コンピューターで、全てのパラレルワールドにいる自分の脳と量子レベルで繋がっていると聞いたことがあります。夢の中の出来事は、単なる妄想ではなくて、どこかのパラレルワールドにいる自分が実際に経験したことであって、眠っていると夢という形で、情報を送ってくるのだ、なんていう説明だったと思います。まあ、この話は、別の機会にします。

以上のように、多世界解釈をすれば、例えば、親殺しのパラドックスなどは、矛盾なく説明できるのかもしれません。

まだまだ、タイムトラベルについて、お話したいことがたくさんあることに気づきました。また、機会を見て、この続きをお話したいと思います。