消えた銀色の扇風機

そんなに昔でない過去、おそらく3~4年前の夏、老母が近所のホームセンターから、
中国製と思われるけっこう背の高い銀色の扇風機を買ってきた。

風は3段階くらい変えられたが、最強にするとかなりけたたましい音を立てて回っていた。

Loosen

それをここ数年、台所で暑い夏の昼に回して使っていたのだ。多分、去年の夏も回っていたと思う。
今年もそれを出してきて使うのかと思いきや、先日東京から帰ると、応接間にあった扇風機が台所に置かれてある。

「あれ、銀色の扇風機どうしたの?」と、母に問うと、「銀色の?そんなのないよ、家にあるのは、この扇風機だけだよ!」と言うのである。
「えっ?!お母さんが買ってきて、去年まで使ってたじゃん!!」「そんなの知らない、買ってないよ、見たことない!」

そして、父も、知らない、と言う。そこで、家じゅうを探してみたが、見つからない。
我が家は、敷地面積だけは広い。納屋や離れもくまなく探してみた。やっぱり見つからない・・・。

そんなバカな!僕は、今でもその扇風機をはっきりと思い浮かべることができる。確かに使っていたのだ。

「お前は、たまにおかしなことをいうなあ」と、母に言われる。

僕だけが覚えていて、家人全員が知らないなんて、いったいどういうことなんだ!

自分の記憶が、おかしくなったのか?
いや、断じてそれはない。そんなことは今まで一度もない。
どういうわけだろう?それとも、家人が、何か不都合なことがあって僕をだましているのか?
そんな必要はあるまい。東京にいる妻にも訊いてみたが、妻はよく覚えてないという。

僕の記憶がおかしくなく、家人も嘘をついてないとすると、
考えられるのは、僕はもしかすると、いままでと違うタイムラインにいるのかもしれない!!!、ということだ。

東京と田舎を往復しているうちに高速道路のトンネルがタイムトンネルになっていて、自分がパラレルワールドにきちゃったのかもしれない!

そういえば、以前、こんなことがあった。

しばらく会っていない友達から連絡があり、「先日はメールをありがとう、今度一杯やろう、君がメールで言っていた店がよさそうなので、今度ぜひ!」というような内容だった。

ところが、僕は、その友だちに直接会ってもいないし、電話もしてないし、メールを送っていない。彼の知らないその店は確かに僕は知っている店で、彼と一緒に行ってもいいとは思っているが、その話もしていない。

で、その友達に、「そんなメール送ってないよ」と、伝えた。
そしたら、しばらくして彼が、「あれ、おかしいな、ほんとだ、メール来てないね。違う誰かと間違えたのかな」という返事が。

ほんとに誰かと間違えたのならいいのだが、そんな店知ってるのは僕くらいだと思うので、すごく変な気分だった。

これも、もしかすると違う時間軸にいる僕が、これまたその違う時間軸にいる友達にメールを打って連絡したのだろうか?
メールは電気信号なので、量子もつれを起こして、時間軸をワープして、こちらの時間軸のサーバーに入ってしまっただろうか?

Why so Serious

この時は、パラレルワールドにいる自分が送ったメールが、こっちの世界にいる友人のところに間違って届いてしまったのかと思ったが、
まさか、メールが入れ替わったんじゃなくて、自分とパラレルワールドにいる自分とが本当に入れ替わっちまってるなんていうことはないよな?!

頭がおかしいんじゃないか、とか言われそうだ。でも、本当にいったいどうなっちゃってるんだ?!