
チェコの国民楽派の作曲家、スメタナの作品です。連作交響詩という呼び名になっています。
この組曲の中の、第2曲はとても有名な「モルダウ」です。「モルダウ」というのは、ハプスブルグ家統治下のドイツ語の呼び方で、チェコ語では、「ヴルタヴァ」と言います。
この「我が祖国」を「プラハの春音楽祭」のオープニング曲として毎年演奏します。プラハの春音楽祭は、スメタナの命日の5月12日から始まります。ちょうど今頃の季節ですね。
私は、7年前に、このプラハの春音楽祭のオープニングコンサートとして、スメタナホールで、「我が祖国」を聴く僥倖を得ました。
「ヴィシュフラド」という古いお城のテーマから始まって、 「ブラニーク」というチェコの富士山に喩えられる山のテーマまで、全六曲で構成されてます。
ハープの調べから、ヴィシュフラドが始まると、なんとなく、胸が詰まってきて 第2曲のブルタヴァ、つまりモルダウのフルートとトライアングルが始まったとたん 涙が溢れてきました・・・。
そして、最後まで泣きっぱなし・・・。 心底感動しました!!!
チェコ人が、いかにこの交響詩を愛しているか、スメタナをいかに敬愛しているか よ~くわかりました。 ほんとに、素晴らしい夜でした。
チェコは、チェコスロヴァキア時代、「人間の顔をした社会主義」を標榜し「プラハの春」と言われる一連の改革を試みたドプチェク政権がソ連の軍事介入で倒され、ずう〜っとソ連の衛星国でした。
そして時代は流れて、1989年の100万人集会、ビロード革命の舞台となったヴァーツラフ広場を通り、スメタナホールに私でも歩いて行けるまでになりました。
しかし、去年、新型コロナのために、プラハの春音楽祭は中止になり、チェコも感染拡大に苦しみました。今年は予定通り行われています。
YouTubeからとってきたのは、私が客席で聴いて泣いていた、まさにその演奏です。2014年5月12日、指揮はイルジー・ビエロフラーヴェク、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。
またいつの日か…。
一日遅れました。「わが祖国」素晴らしい曲です。難聴に陥ったスメタナがその苦悩の中でも残していってくれた傑作、チェコへの愛の歌です。国外ではよく演奏される曲ですが、チェコ国内では敬われ、大事な時にのみ演奏されると聞いています。お書きくださった「プラハの春」のオープニングもそうでしょう。何と貴重な体験を涙を持って聴いていただいたことに心から感謝いたします。ハプスブルグ帝国下、独立、ナチスによる強圧な侵略、占領、共産下、プラハの春、ソ連軍によるチェコ動乱、その共産下より勝ち取ったビロード革命、その後のスロバキアとの別れ、と苦悩の中でも戦い続けてきた文化的素養の高い国民です。クーベリックが共産下から亡命し、ビロード革命後に演奏した「わが祖国」も記念すべき演奏でした。演奏自体から行くとボストン交響楽団との録音も捨てがたいのですが。ただナチス政権下で家族全員を虐殺され、しかしその後チェコフィルの音楽監督となったカレル・アンチェルがプラハの春の年に行ったオープニング演奏の記録もまた素晴らしいものです。チェコ動乱の最中亡命を行い、単身国外で死去せざるを得なかった彼、チェコの歴史は苦悩と涙と相克の歴史でもあります。取り上げて頂いて有難うございます。
中尾さん
コメントありがとうございます。
チェコの人たちは本当に我慢強い人たちです。ですが、精神性の高い、とても粘り強い人たちですね。
プラハの春音楽祭は、戦後すぐにクーベリックが第1回を振ってから、ずっと続いていたのに去年は中止でした。アンチェルはチェコのユダヤ人でしたから患難辛苦を味わいましたね。
また、チェコやハンガリー、ドイツ、オーストリアなどの劇場めぐりとホイリゲめぐりをしたいものです。
ところで、コバケンもプラハの春音楽祭、チェコフィルで、我が祖国を振っているんですよね。びっくりです。