無用の用

今の若者は、詩集などというものを読むのでしょうか?

ただ美しいだけ、ただ純粋で気高いことだけ、がその存在意義であるようなこういう文学作品を。

こういうものを読んでも、もちろん、給料アップにつながるわけでもなく、出世に貢献できるわけでもありません。

ただ、何の役にも立たないもの、として存在するものにどれだけの価値を見出せるか、と、逆にその文学作品から、こちらが問われているような気がします。

人生の豊かさは、物質的なものだけではなく、精神的な面も無視できません。

特に、今後ますます長くなるであろう中高年の時間には、もちろん詩に限りませんが、こういう何の役にも立たないものを今までにどれだけ摂取してきたかで、その豊かさが左右されるように思うのです。

ヴェルレーヌ詩集の中にこんな一節があります。

『道化者よ!そんなばかげた茶番はやめろ!』

と若者が叫ぶ。

ピエロは言う、

『これは、あんたが思っているような、道化でも茶番でもないぞ・・・』

この言葉の意味が、だんだんわかってきたような気がします。

人生は短くて長い・・・。