新しい経済システムと日本の未来(1)

今日は、緊急事態宣言が出され、この新型コロナ感染症がいつ頃収束するのかについて考えてみようと思ったのですが、かなり易の卦の読みが複雑で、もう少し時間をかけて考えたいと思ったのでまた後日にアップしたいと思います。

その代わりと言っては何ですが、何回かに分けて、現状の金融経済システムがどうなっているのか説明して、この新型コロナショックとも言える経済不安を克服して、2020年代から、日本経済はどんなものになるのかについて、予想していきたいと思います。

その際、占いとかも使うかもしれませんが、合理的な推論などもベースにしながら、真面目に日本の将来を考えていきたいと思います。

まず今回は、その第1回目として、アベノミクス、金融緩和くらいまでを軽く振り返って、現状の確認をしてみたいと思います。

1.管理通貨制・ケインズ政策

2.金融緩和とアベノミクス

1.管理通貨制・ケインズ政策

1929年の世界恐慌の前後、欧米先進各国は、従来の金融システムであった「金本位制」を廃止し、「管理通貨制」に移行しました。

この頃は、みんなに信用される価値のある流通物は「金(きん)」であり、中央銀行の発行する「貨幣」すなわち「おカネ」は、銀行に持っていけばいつでも、同額の「金(きん)」と交換してくれるものでした。ご存知の方も多いと思いますが、「金本位制」というのは、各国の中央銀行が保有する「金(きん)」の価値の額しか通貨を発行できない仕組みのことです。当たり前ですよね、「金(きん)」といつでも交換することを保証しているわけですから、銀行が持っている「金(きん)」の価値の分しか「おカネ」は発行できないわけです。

しかし、1929年のような、大恐慌があったら、世の中のおカネの流通は滞ってしまい、資金繰りに苦しむ人が続出します。それなのに、「金本位制」だと、中央銀行は、自分の持っている「金(きん)」の価値の分しか「おカネ」は発行できないわけですから、資金繰りに困っている人に、素早く、必要なおカネを供給することはできません。しかし、おカネが世の中の必要な人々に供給できないと、経済の仕組みそのものが崩壊してしまいそうでした。

そこで、もう「金(きん)」と「おカネ」を交換することをやめて、「おカネ」を大量に印刷して、世の中に出回らせたわけです。これが「管理通貨制」です。

景気が悪い時は、世の中に出回るお金の量が少ないので、世の中の人にはお金がありません。しかし、お金がない人に理由もなくお金を配るわけにはいかない、ということが常識でした(今でも基本的にはそうですね)。そこで、政府が、公共事業(ダムを作るとか、道路を作るとか)をして、そのための労働者たちを雇って、働いてもらって、その労働の対価として、つまり給料として払う、という形を取りました。

給料をもらった労働者たちは、生活に必要なものを買いますよね。不景気の時、社会の中で、そういうお金の動きが起きると、次から次へと連鎖反応的にお金が流れるようになり、最終的には景気が良くなる、という理屈です。

これを考えたのはケインズという人で、ケインズのこの考え方に沿って、不景気の時に公共事業をやり、世の中におカネを増やして、景気を良くするという政策を現代の政府はず〜っとやってきたわけです。

でも、ただ、お金を刷って増やすだけでは、第1次世界大戦後にドイツで起きたような、もの凄いインフレ(物価高)になってしまうと考えられました。また、現実的に政府の金庫に、税金として国民から集めたおカネはあったのですが、他の使い途に回さなければならないので、それを全部使っても、景気を良くするための公共事業をする元手としては、全然足りませんでした。ですから、政府は、お金を刷って増やす時、「国債」という政府の借用書を発行することにしました。

先進各国の政府は、不景気の時、景気を良くするために公共事業をし続けました。その度に、「国債」を発行し続けました。それで、政府の財政は、慢性的な赤字になってしまいました。日本は特にひどくて、累積の総額1200兆円もの赤字を抱え込んでしまいました。これは国家予算の12年分にもなります。

「財政健全化」つまり、もう、あまり借金はしない、という課題が意識されているので、景気を良くするために、新規にたくさん国債を発行することはあまりできなくなり、公共事業を大々的にやって、世の中のお金を増やす、ということができません。

2.金融緩和とアベノミクス

そこで、おカネを刷って発行している中央銀行(日本の場合は日本銀行)は、市中の民間銀行におカネを融通する(貸す)時の利息を安くしてあげる、ということを考えました。中央銀行の利息が下がれば、その分、市中銀行が世の中の人に貸すときの利息も下がります。よって、世の中の人々はおカネが借りやすくなり、世の中のおカネの出回りが良くなり、景気も良くなる、という理屈で、中央銀行の利息を下げるということもやるようになりました。

しかし、景気を良くするために、利息を下げて、下げて、下げて、とうとう、利息(正確には銀行どうしの翌日返す約束の貸し借りの利息)が、ゼロになり、これ以上利息を下げることはできなくなってしまいました。

それでも、不景気でデフレ(物価安)な世の中なので、景気を良くしなければなりません。そのためには、なんとかして世の中に出回るおカネの量を増やさないといけません。そこで、今度は、市中銀行などが持っている国債を買い上げる政策を始めます。代金は中央銀行が、市中の銀行に支払います。そうすると、市中銀行の金庫に中央銀行からもらった代金の分だけおカネが増えることになります。銀行にお金が増えれば、世の中の人々により多くおカネを貸すことができます。そうすれば、世の中にたくさんおカネが出回って、すぐに景気が良くなるだろう、って考えて始めたのが、「アベノミクスの第1の矢」、「異次元」「量的緩和」とか、「黒田バズーカ」とか、言われた日本銀行の金融緩和政策でした。

市中銀行などの民間金融機関は、財務省などの発行する「国債」を買い、それを、今度は日銀に買ってもらって、利鞘を稼ぐ、ということで、市中銀行の金庫には、おカネが貯まる、という状況になりました。

しかしながら、一向に世の中におカネは出回らない。一向にデフレは解消しない。そういう状況になってしまいました。市中銀行などの金融機関の金庫におカネが貯まると、もともとお金を借りたい個人や企業もあんまりいないので、ちょっと世の中の人々や企業に貸し出し、また、株などを買って運用してそれでもあまりが出るので、日銀の金庫に預けてしまう、という事態が起きました。日銀はおカネを刷って世の中に出まわらせ、わざとインフレを起こしてデフレ脱却、景気回復を図ろうと思ったのに、刷ったおカネが世の中に出まわらずに、日銀の金庫に戻ってきてしまい、金庫が満杯になってしまう、という事態を引き起こしてしまいました。

それでも、アベノミクス以前よりは、日銀が刷って増やしたおカネの量は、倍以上になっているので、株が買われたりして、株価が震災後の3倍くらいになったりしていますが、依然、世の中にお金が出回って、景気が良くなった感じは庶民にはありませんよね。一部富裕層には、不動産ミニバブルや官制相場の恩恵を受けた人々がいると思いますが、我々一般庶民には、その恩恵は及んで来なかったのです。

アベノミクスは、「デフレ脱却のための3本の矢」を軸として始まり、もう8年にもなりますが、デフレ脱却、景気回復などはまだまだ道半ばの感があります。

では、新型コロナショックで、日本経済はどうなってしまうのでしょうか?

これについては、また次回に考察していきたいと思います。お楽しみに!