インター・ステラーとディラン・トーマスの詩

SF映画「インター・ステラー」の中の、「ラザロ計画」の責任者、ブラント教授が、映画の中で何度も引用していた、イギリスの詩人、ディラン・トマスの詩、「Do Not Go Gentle Into That Good Night」を、調べてみました。

まず、この詩人、ディラン・トマスについて調べました。

ディラン・トマスは、イギリスのウェールズ南部の都市、スウォンジー出身の、39歳で没した短命の詩人です。

20世紀最大の詩人の一人に数えられ、幻想的な詩風は、ボブ・ディランも憧れたといいます。

そのディラン・トマスの最も有名な詩の一つが、この「Do Not Go Gentle Into That Good Night」です。

詩の前文は以下の通りです。

 Do Not Go Gentle Into That Good Night
                          Dylan Thomas


Do not go gentle into that good night,
Old age should burn and rave at close of day;
Rage, rage against the dying of the light.

Though wise men at their end know dark is right,
Because their words have forked no lightning they
Do not go gentle into that good night.

Good men, the last wave by, crying how bright
Their frail deeds might have danced in a green bay,
Rage, rage against the dying of the light.

Wild men who caught and sang the sun in flight,
And learn, too late, they grieved it on its way,
Do not go gentle into that good night.

Grave men, near death, who see with blinding sight
Blind eyes could blaze like meteors and be gay,
Rage, rage against the dying of the light.

And you, my father, there on that sad height,
Curse, bless me now with your fierce tears, I pray.
Do not go gentle into that good night.
Rage, rage against the dying of the light.


 あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない
                           ディラン・トマス
                           鈴木洋美 訳 

あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない
老齢は日暮れに 燃えさかり荒れ狂うべきだ
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ

賢人は死に臨んで 闇こそ正当であると知りながら
彼らの言葉が稲妻を 二分することはなかったから 彼らは
あの快い夜のなかへおとなしく流されていきはしない

彼らのはかない行いが緑なす入江で どれほど明るく踊ったかも知れぬと
最後の波ぎわで 叫んでいる善人たちよ
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ

天翔ける太陽をとらえて歌い
その巡る途中の太陽を悲しませただけだと 遅すぎて悟る 気性の荒い人たちよ
あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない

盲目の目が流星のように燃え立ち明るくあり得たことを
見えなくなりつつある目でみる いまわのきわの まじめな人たちよ
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ

そしてあなた ぼくの父よ その悲しみの絶頂で
どうかいま あなたの激しい涙で ぼくを呪い祝福してください
あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ


※松浦暢編『映画で英詩入門』(平凡社、2004)より

老人こそ、死を前にしてその命を燃やせ!という、ディラン・トマス流の応援歌です。病床のお父さんにむけて書いた詩だそうです。

インター・ステラーの中で、ブラント教授が引用したのは、もちろん、自分に対する鼓舞の意味と、気候変動で死にゆく運命の人類に対する鼓舞の意味があったのは明らかですね。

中高年である私としても、応援歌として受け止めようと思います。